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ごみではなく宝の山かもしれない 「ごみ屋敷」対策の難しさ

 ごみ屋敷って、最近少し下火になったかもしれませんが、ワイドショーの一つの定番ネタである気がします。

 子どものころと比べるとこんなに世の中変わったのに、変わらずに問題として取り上げられ続けているものの一つではないでしょうか。

 

「ごみ屋敷」対策の法案提出

 野党によって、ごみ屋敷対策の法案が提出されたそうです。

 日本維新の会、みんな、結い、生活の各党は「ごみ屋敷」対策法案(廃棄物の集積又は貯蔵等に起因する周辺の生活環境の保全上の支障の除去等に関する法律案)を5月16日に共同提出しました。地方自治体の首長がごみの撤去を勧告し、立ち入り調査できるようにし、従わない場合は50万円以下の罰金を科すというものです。

野党4党が法案提出 自治体の「ごみ屋敷」対策の現状は (THE PAGE) - Yahoo!ニュース

 

ごみ屋敷の何が難しいのか

 今、法案が提出されたということは、現在の制度では、うまく対応できないから、対応できるしくみをつくろうとしているということです。では何が難しいのでしょう。

 

 ごみ屋敷に多くのものがあり、悪臭や野良猫の出入りなど近所への影響があるとしても、だからといって、本人の同意なしに片づけてあげるというおせっかいを焼くことは、行政ができることではありません。

 例えば、あまりに物が多く、道路にはみ出しているような場合であれば、そこが公道であれば、行政には公道を管理する権限がありますから、そこを片付けるということはできます。

 しかしながら、「ごみ屋敷」とはいっても、そこにある物は本人にとっては宝の山かもしれませんし、何より財産権があるので、私有地内の物を勝手に撤去したり(行政代執行)することはできません。

 このように、ごみ屋敷に対して行政が直接手を下す手段は限られており、実際のところは、民生委員などが中心となって、問題となっている家の事情を把握し、行政と連携し、その家に対して必要な支援・助言などをしているというのが実情のようです。

 

でも、片づけてほしい場合もある

 一方、最近では、片づけられなくなってしまったがために、ごみ屋敷になってしまったというケースもみられるそうです。

 典型的な例としては、高齢の一人暮らしなどで、身体が思うように動かなくなり、食事をしても片づけられない、ごみが出ても捨てに行けない、そのため、いつも家の中の決まった場所におり、その周囲に物が溜まっていくというケースです。

 この場合は、支援があればごみ屋敷から脱却できる見込みがあります。

 

ごみ屋敷条例も

 上述の記事では、ごみ屋敷について条例を制定している例も取り上げられていました。

 東京都足立区では、昨年から足立区生活環境の保全に関する条例(通称・ごみ屋敷条例)を施行しています。各地方自治体でも同様の条例を制定しています。 足立区の特徴は、最大100万円まで撤去費用を区が負担するというものです。行政が撤去費用を負担することは、税金が使われることになります。
 「『私有地のごみを片付けるのに、税金を使うのはけしからん!』という意見があることは承知しています。しかし、職員がごみ屋敷を片付けても、結局は人件費が高くなり、もっと多くの税金を使うことになってしまうのです。100万円を区が負担することで民間事業者に委託し、NPOや自治会などの協力してもらい、撤去費用を抑えることができるのです」(足立区環境部生活環境保全課)

 最初に挙げた、本人にとっては大事なものを保有しているケースのごみ屋敷の場合は、 このおせっかいがどの程度届くのかわかりませんし、届く場合でも、そこに行きつくまでの説得プロセスが大変であることが想定されます。

 しかし一方で、片づけてほしいケースの場合は、この支援を提示すれば、ごみ屋敷は速やかに解消されると考えられます。

 

 昨年度の実績は2件ということですが、このくらいの支出で本人も近所もハッピーになれるとしたら、どんどん活用していくべきではないでしょうか。

 

法案のゆくえは

 最近法案が提出されたばかりとなると、もう5月末ですから、順調に審議されるとしても、成立は次の臨時国会以降となるのかもしれません。短い臨時国会で取り上げられるかどうかもわかりません。 

 とはいえ、地縁が薄れている現代で、昔のように、ご近所さんが世話を焼いて説得したり片づけてあげたりということができにくい時代ですから、そういった新たな法制度は、遅かれ早かれつくられるべきなのかもしれません。

 制定にあたっては、財産権という基本的な権利にかかわる制度になりますから、十分議論されてつくられることが望まれますね。