神奈川県の犬の殺処分ゼロ 他地域で実現するためには
少し前のことですが、神奈川県の黒岩知事が、県内の犬の殺処分が昨年度初めてゼロになったことを受け、殺処分ゼロ継続を宣言したそうです。
県の譲渡会のほか、ボランティアの協力も
神奈川県動物保護センター(平塚市)で昨年度、犬の殺処分が初めてゼロになったことを受け、黒岩祐治知事は22日、「殺処分ゼロを継続する。動物に優しい県を目指す」と宣言した。センターの登録ボランティアらの表彰式で述べた。今後、保護された犬や猫の譲渡会を県庁でも開くという。
「犬の殺処分ゼロ続けます」 神奈川・黒岩知事が宣言:朝日新聞デジタル
神奈川県動物保護センターは、同センターにおいて既に犬・猫の譲渡会を開いており、飼育に関する講習を受けた人だけがその譲渡会に参加できるしくみをつくっています。
また、登録したボランティアが同センターに収容された動物を引き取り、新しい飼い主を探すということも行っており、こうした取組が評価され、ボランティアの方などが表彰されたということです。
他地域に広がるか ボランティアに頼る課題
一方、上記の記事では、殺処分ゼロ宣言に関する課題も示されています。
ボランティア団体「アニマルプロテクション」スタッフの吉田愛さん(29)も県庁での譲渡会開催を歓迎する。ただ、「殺処分がゼロになったことで『神奈川に捨てれば殺されない』と放棄が増えるのでは、との不安が大きい。殺処分ゼロで終わりではなく、ここからがスタート」と話す。
待機児童がゼロになると、そこに行けば保育所に入れるかも、と期待して子育て世代がその自治体に引っ越すのと似ていて、ある地域だけで優れた取組を行っても解決するものではありません。
それでは、どのように取り組みを広げればよいのでしょうか。
神奈川県の場合は、動物保護センターにおける保護・譲渡のほか、32のボランティア団体・個人の協力により、収容された動物が新たな飼い主を見つけることができています。
しかし、同様の団体・個人が多くない地域では、今すぐ同じように取り組むということは難しいでしょう。また、ボランティアは無償というイメージの強い日本では、ボランティアの活動の基盤が弱いことも多いので、そういった面でも、ボランティアと連携していく場合、同時に、ボランティアに対する支援も必要です。
具体的には、次のような支援が必要ではないでしょうか。
- 保護・譲渡に関する指導・支援(新たにボランティアを行いたい個人などが適切な保護・譲渡が行えるようにするため)
- 現在活動している団体の紹介(新たに団体に入りたい個人が所属する団体を見つけるため)
- NPO法人化など、組織運営に関する支援(既にある団体が安定して活動するため)
特に、3番目は、動物の保護に限らず、さまざまな分野において今後重要なことであると思います。
個人の善意による活動は、社会に大いに貢献していますが、個人の善意とポケットマネーだけに頼っていては、その活動を拡大していくことや継続していくことには心配もみられます。
こうしたところこそ、行政の支援が効果を発揮するところではないでしょうか。