学食に「ぼっち席」広がる 利用実態に合わせればいいのでは?
大学の学食に「ぼっち席」が広がっているそうです。私たちのころはなかったのに、いつの間に・・・
「ぼっち席」=「1人用席」が定着
全国の大学の食堂で、テーブルをついたてで仕切るなどした「1人用席」を設ける動きが広がっている。
相席を嫌がる学生が増え、「1人でも周囲の目を気にせず食事をしたい」という声に応えたもので、「独りぼっち」を意味する「ぼっち席」と呼ばれ定着している。
相席イヤ…学食に1人用「ぼっち席」広がる (読売新聞) - Yahoo!ニュース
全国の大学の食堂で「ぼっち席」が広がっており、記事の冒頭で取り上げられた学習院大では約470席のうち100席をぼっち席にしたのだそうです。結構多い印象です。
しかも、向かい側と視線が合わないように三角形のテーブル席を設けるなどの工夫もしているとのこと。仕切りを設けるとかだけでなく、テーブルの形まで変えてしまうのですね・・・!
他にも、京都大、神戸大、大東文化大、福井大と、「ぼっち席」を取り入れた例が続々。
テーブル席だと学生が相席を避けるため空席が多かったのが、ぼっち席の導入で席の利用が効率的になったところもあるとのこと。
いいじゃないですか。
また、学食が朝食に力を入れるなどして、学生の食生活を支援している大学もありますから、そういったところは、学生に多く利用してもらうという意味でも、利用しやすい環境づくりを考えたほうが、相乗効果が生まれそうです。
学食は食事をするだけの場所ではない
一方で、学食は、ただの食事の場所ではなかったことも思い出します。
学内の学生会館などの談話スペースは場所が限られていますから、学食は、学生にとって格好の打合せスペースであり、皆で談笑する場所ともなっています。
私が学生のころなど、そういった利用が多いあまり、落ち着いて食事ができないということで、「食事専用」なるエリアが設けられている食堂がありました。
学食は「場」、学生の交流促進そのものとは違うのでは
上述の記事では、このようなコメントも挙げられていました。
学食の改善に携わった瀬谷晴仁・同大キャリアセンター部長(57)は「学生の要望に対応する必要はあるが、大人数でわいわい食べに来てほしい気もする」と複雑な表情だ。
心療内科医の生野照子・神戸女学院大名誉教授は「今の若者は対人関係が苦手な反面、孤独に見られるのを嫌い、トイレで食事をする極端なケースもある。学生が自然に交流できる場を工夫することも必要だ」と指摘している。
学食には、学生たちが食事をする場であるだけでなく、先ほど挙げたように、学生たちが集まる場であるという側面があります。
そのため、ぼっち席を設ける一方で、ある程度、学生たちが大人数で集まりやすい、使いやすいスペースを確保しておくことは、今後も必要でしょう。
しかし、食堂において「学生が自然に交流できる場を工夫する」とは、一体何なのでしょうか。
自分の限られた経験からではありますが、交流はおそらく食堂で生まれるものではなく、サークルや教室など、どこか別の場所で形成されていて、それが持ち込まれる「場」が食堂であるということだと思います。
もし、食堂が交流の中心というところがあれば別ですが、そうではなく、食堂は学生たちが利用する「場」にすぎないのであれば、大学側が学生たちの動きをみて、1人で利用する学生が多いのか集団が多いのかなどの利用実態を把握した上で、それを施設の改善に生かせば十分なのではないでしょうか。
「ぼっち」「便所飯」など、大学側が、孤立する学生たちの動向を気にするのはわかります。
実際に、ぼっち席の広がりも、そういった学生たちの変化を表しているのかもしれません。
しかしながら、学生たちの孤立の一つのあらわれである「ぼっち席」の状況とその孤立の解消を同じ土俵で語ってしまうことには、違和感を覚えました。