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「お薬手帳断ろう」なんて言っていいの? 活用促進への課題は

 しばらく前から、お薬手帳を断ると20円安くなる、というような話がTwitterで出回っているのは知っていました。

 どうも広がっているようです。

 

お薬手帳」とは

 「お薬手帳」とは、自分が使っている薬の名前・量・日数・使用法などを記録できる手帳です。調剤薬局で薬を処方してもらった場合は、お薬手帳を提示すると、薬の情報が書かれたシールを貼るなどのかたちでお薬手帳に処方された薬の情報を追加してくれます。

 また、お薬手帳には、副作用歴、アレルギーの有無、過去にかかった病気、体調の変化などを記載するページもあり、これらを書いておくことで、初めて行った薬局でも、薬剤師にそういった情報を伝えることができます。

 一部の医療機関や調剤薬局のサービスとして始まった取組ですが、2000年に、薬の飲み合わせチェックなどの効果が期待されて国の制度となり、調剤報酬として評価されるようになり、今に至ります。

「お薬手帳」活用のススメ|処方せんをもらったら|日本調剤

 

 花粉症などで継続して薬を飲む方もいると思いますが、そういったときに風邪薬をもらったらどうすればいいのか、痛み止めを飲みたいときはどうなのかなど、わからないことが出てくることがあると思います。

 私も、継続して飲む必要のある薬を飲み始めたときに、あっちの病院でもらった薬は今日もらった薬と一緒に飲んでいいのだろうか、など気になることがあり、それで初めてお薬手帳をちゃんと持参するようになりました。

 また、食物や薬のアレルギーを持っている人にとっては、万が一急に具合が悪くなった場合でも、それらの情報が書いてあるお薬手帳を提示すれば、適切な処置につながるという安心感もあります。

 

お薬手帳を断ろう」なんて言っていいの?

 しかし、冒頭にも書きましたが、お薬手帳を断れば20円安くなる、といった情報が広がっているようです。

 「お薬手帳を断れば、薬局の支払いが20円安くなる」。医療の値段である診療報酬が4月に改定されたことを受け、インターネットの短文投稿サイト「ツイッター」でそんな情報が広がっている。

 従来、手帳への記載などで薬局が得られる「薬剤服用歴管理指導料」は410円だったが、4月の診療報酬改定で手帳が不要な人への指導料は340円に減額された。3割負担だと自己負担額は20円安くなる計算だ。
 ネット上では「手帳を断れば20円安くなる」「20円を得るため、薬局は勧めてくるので断ろう」といった情報が拡散。逆に「20円のために健康を危険にさらすのか」などの反論も続出している。

「お薬手帳断ろう、20円安く」ツイッターで拡散 薬局などは有用性PR (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 

 まぁ確かに、年に1回も医者にはかからないという人などが必要ないと言いたい気持ちもわかります。

 しかし、それを節約術かのように安易に拡散するのは違うと思います。

 

 厚生労働省は「安くなる裏技のように情報が広がるのは好ましくない」とするが、「患者側が手帳にメリットを感じていないから、そういう意見が出るのではないか」と医療者側にも責任があるとする。

 上述の記事ではこのような記述もありましたが、医療者側に責任を押し付けるのも違うように思います。

 もちろん、薬局において、薬等の情報を薬局間で共有することの意義などをきちんと説明することは必要だと思いますが、それだけでなく、「お薬手帳を断れば20円節約」と言われる状況をつくるような診療報酬の設定にも課題があるのではないでしょうか。

 

 とはいえ、この問題の根本にあるのは「お薬手帳にメリットを感じていない人も多い」ということなので、やはりこれを解消する必要があります。

 

お薬手帳スマホで見られるようにしたら?

 お薬手帳のメリットを減じている一つの要因が、「いちいち持っていくのが面倒」ということではないでしょうか。

 私は、何かあったときのことを考えて、お薬手帳はいつも持ち歩いていますが、普段はいらないという人も多いでしょうし、そうすると、病院に行くときに忘れてしまうということもあると思います。

 

 そこで、こんなニュースがあります。

 薬の履歴をまとめた「お薬手帳」をスマートフォンスマホ)で管理するのが「電子お薬手帳」。薬を飲む時間を知らせるなど電子版ならではの便利な機能を満載したアプリが続々登場している。利用できる薬局が少 ないのが弱点だったが、この春、薬局などの情報端末が更新され、全国で薬のデータを取り込める体制づくりが始まった。

お薬手帳、電子化で便利に 服薬時刻通知など多機能 :日本経済新聞

 

 これなら、アプリを入れるだけですから、携帯する人も増えるのではないでしょうか。

 現在は、利用できる薬局が増えているとはいえ、まだ限られており、また、診療報酬の算定外ということですが、これが広まって、診療報酬の算定に含まれるようになれば、多くの薬局で取り組まれるようになり、お薬手帳自体の活用促進にも役立つのではないでしょうか。